決定版 これがCPUグリス塗りだ
高温のCPUを効率良く放熱し、オーバークロックで働かせるためには必須の作業である放熱用グリス塗りの極意を鴨きも読者のみにこっそりとお教えいたしましょう。
世は情報社会、CPUへのグリスの塗り方なんぞそれこそ星の数ほどの情報を入手することができます。個人のやることですからそれこそどの方法でも良いのでしょうが、ここ一番の放熱が欲しい場合、ベターな方法は存在すると思うんです。紹介するのは私が経験的にベストと思ってやっている方法です。まぁこんなやり方もあると言うことで・・・
まず理屈から。話題の核心となる熱伝達率h(熱伝導じゃないですよ)は以下にて求められます。
Q
h = ------------
A(Tw-Ta)
つまり熱伝達率を高くするには熱移動量を多くしてやるかグリスやCPUの温度を低くしてやるかふたつにひとつです。
ここで注目したいのは介在としてのグリスの存在です。分母をできるだけ小さくしたいなら伝熱面積AとCPUの表面温度Twが決まっているので、グリスの熱の通りを限りなくCPUの発熱温度と近似にできればいいわけです。逆に言えばグリスが効率良く熱を通してくれなければ高価なヒートシンクであってもなんの役にも立たないということになりますね。
はっきり言います。後でやり直すからいいやと適当にシリコングリスを塗ってヒートシンクをセットした場合と、以下の塗り方で行ったグリス塗り後のヒートシンクセットとでは、結果同種のグリスを使っても100%の負荷時に平均CPUコア温度で10度ほどの差が出ます。さらに並品のシリコングリスを銀入のシルバーグリスに換えるとアイドルでは5度程度、負荷時には7~8度はそこから下げられます。
3.5 gで1300円もするシルバーグリスAS-5を使って下記の方法で入念にグリスアップ作業を行った結果、Core i7 4790Kのコア電圧とキャッシュ電圧をさらに0.02Vずつ持ち上げ、そのままで4コア100%負荷動作のCPUクロック常用値をCPU内部クロックで100MHz持ち上げることができました。(48倍、48倍、47倍、47倍)
たかがグリス塗り、されどグリス塗りです。以下はそのシルバーグリスを使用した作業方法のステップです。
まずアルコール系の洗浄剤などでCPUのヒートスプレッダ、ヒートシンクの熱伝導面に付着した古いグリスをクリーニングします。さらに20mm幅のマスキングテープを用いてCPUのヒートスプレッダの四隅各5mmほどをカバーするようにマスキングします。
別に20mm幅のテープにこだわらなくてもいいですが、使い勝手的にはこの幅が作業性が高いと思いますよ。ヒートスプレッダを装備しないCPUや殻割り済みの場合はマスクする幅を2mm程度とすると良いでしょう。
CPUの中心にシルバーグリスを米粒ほどの量を置きます。ほんとに米粒程度でいいんです。どうしても多めに付けてしまいそうですが、余分なグリスは放熱の妨げになるし、なにより高価な銀入りのクリスがもったいない。過剰塗布はメリット無しと心得ましょう。
よく多めにグリスを盛ってヒートシンクを押し付けて圧力で伸ばすみたいなことを勧める方もおります。その方法ではグリスの塗布厚や塗布面積の管理ができず、場合によっては導電性の有るシルバーグリスが押し付けられてヒートスプレッダをはみ出し、CPUの基板に付着して短絡を誘発するようなケースも無いとは言えないので注意が必要です。
グリスを塗り伸ばします。塗り伸ばすのにヘラを使うのを推奨する向きもありますが、ヘラを使ってムラ無く仕上げるのに相応の仕上がり厚が必要になってしまいます。初期の塗り伸ばしはヘラを使っても良いですが、仕上げは人差し指の腹で入念に伸ばして下さい。ヘラで擦ったらヒートスプレッダの地金が直ぐに出てしまうくらいの極薄になるよう塗り伸ばします。ここで放熱効率の9割が決まると言っても過言ではないでしょう。CPUの地金が見えないように極薄くです。
グリス塗布の仕上がりはこんな感じです。グリス層の厚みはマスキングテープの厚みの半分以下です。熱伝達の効率化のためには伝達層は均質かつ薄いのに越したことはないのです。均質な仕上がりはやはり神経の集中した人さし指の腹が適しています。一番重要なステップですので時間を掛け納得の行くまで擦りまくって下さい。元々粘度の高いグリスですので擦っているうちに固過ぎと感じたら、シリコンオイルをほんの少し垂らしてやると良いです。
マスキングテープを剥がせばCPU側の仕上がりです。この薄い状態ではヒートシンクで圧力を掛けてもはみ出す心配もなく、また周囲5mmの余裕もあります。よくこのグリスを使って使用数日後にだんだんCPU温度が下がってきたなんていうことを言う方もいますがこれは塗り過ぎのパターンでしょう。塗り厚が厚かったためにCPUの熱で軟化してヒートシンク面からの面圧によってグリスが押し出されてグリス層の厚みが変化したせいだと思われます。
ヒートシンク側は少量のグリスを塗布して直ぐに拭き取ります。薄っすらと表面に曇りができるくらいのコーティングをします。これはCPU塗布のグリスの食い付きを良くするためのコーティングですのでCPU側と同様の塗りは決してしてはいけません。
この後ヒートシンクをマザーボードへ組み入れます。ヒートシンクをCPUへ接触させるときにはCPUのエッジ一方にヒートシンクを当て、徐々に倒していき気泡が入らないように密着させます。ヒートシンクを治具で固定してこれにで一件落着。
上記の手順によって行った作業後は即座に温度低下の効果が認められ、その効果は日数が経過しても変わりません。以前は銅粉とシリコングリス、シリコンオイルを混ぜてスペシャルCPUグリスを作ってみたこともありましたが、銅粉の粒子が荒すぎて平滑面を構成できず玉砕した経験があります。
今は市販でいいグリスがあるんですねぇ。なかにはダイヤモンドの入っているものもあるとか。ダイヤなんてカミサンにすら買ってあげたこともないのに、とてもじゃないですがCPUなんぞに使っておられませんです。
上記の方法はCPUのヒートスプレッダとヒートシンク当たり面が共に平滑であることが前提です。レベルにばらつきがある場合はそれを吸収するために、ケースによってはより多くのグリス量が必要になる場合もあるでしょう。
さてさてどうでしょう。これで貴方もCPUグリス塗りの達人になれますよぉ。
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マスキングまでされて丁寧ですね、しかし指直接はダメなようです。
メーカー説明書にも記してありました
「指で塗らないでください。指の油により性能が低下します。」
(ttp://www.ainex.jp/data/as-05_mnl_web.pdf)
投稿: | 2015年10月 7日 (水) 04時30分
コメントありがとうございます。
本文にも書きましたが調べればやり方は星の数ほどもあるので、マニュアルの通りが良いと思う人はその通りにやればいいだけのことです。
ただ紹介したような塗り方をするには指先の腹で感触を感じながら薄塗りをしないと出来ないことなので、私はこの方法が良いと思ってやっています。それにより良い結果が出ているので例として紹介しています。
グリスにはシリコンオイルが入っていますので脂分まったくが駄目というわけではないのではと思います。恐らくは汗の塩分がよろしくないのかな。それとてグリスを塗り伸ばす前に手を洗って脂分を落としておけばいいだけの事ではないでしょうか。
そうぞ色々試されて有意差が発見できたら私にもどうか教えて下さい。
投稿: Fiby | 2015年10月 7日 (水) 22時01分
グリース塗布方法についての情報&アドバイスありがとうございます。
私は、ノートPCのGPUの半田切れを修復するためヒートガン炙りました。終了後CPU、GPUとヒートシンクを接着する時、高価なダイヤモンド入りのグリスしか売って無かったので仕方なく購入し塗布しました。
初回はたっぷり厚く塗った方が良いと早合点し、出来るだけ厚く塗ったため、GPUの半田が2ヶ月ほどで切れました。
この記事を読みましたので、再度リフロー後今回は極薄に塗布した結果、現在放熱効率も良く4ヶ月立ても故障無く快調です。
「放熱用グリース塗りの極意」についての情報ありがとうございました。
投稿: オッハー | 2015年10月15日 (木) 21時05分
オッハーさん、コメントありがとうございます。
ノートとはいえGPUのQFPパッケージの足をヒートガンであぶるとはなかなかですね。GPUをクロックアップさせすぎたのでしょうかね。
私のつたない記事が少しなりともお役にたったようで嬉しいです。グリスの薄塗りっていうのは論理的にも筋が通ったことなのではと思ってやっています。
皆さんこの手のことは自分流にやられている方々がほとんどなので、どの方法でも良いのだと思いますが、ここ一番というときに、ちょっとばかりこだわってみると良い結果が出せることもあるのだと考えてやってみるようにしています。
私は思い込みの激しい人なので失敗することも多いですが、思った結果が出ると嬉しいものです。またいい結果が出たらご紹介しようと考えています。
投稿: Fiby | 2015年10月15日 (木) 22時26分
今回は自作2台目なのでちゃんと作ろうと(1台目は勢いでしたwww)
思い色々調べていました。1台目はFANがうるさく今回はCPUクーラーも大型を購入
したのですが、やはりCPUからの熱を伝える部分が肝だと思い色々みてて
貴殿の記事がとても参考になりました。CPUクーラー側のことも書いていて、勉強になりました。今からグリス買いに行ってきます!
投稿: シロート | 2015年10月25日 (日) 12時08分
シロートさん、コメントありがとうございます。
いくらかなりとも参考になったようで良かったです。本文にも書いてありますとおりグリスの塗り方は多種多様に存在します。気に入ったらどの方法を取ってもいいのだと思います。私は経験的にこの方法で効果があったと実感しているので紹介しているものです。
私の知らないもっと良い方法もあるかもしれません。グリスの塗り方で効果が有ったか無かったかはベンチでも走らせながらCPU温度を計測すれば直ぐに分かります。色々と試されて下さいね。
投稿: Fiby | 2015年10月26日 (月) 20時46分
汗が悪いというか生物から分泌される油分は同じ油分でも
それ自体が酸化しますからね。皮膚の細胞が混入したのも腐敗しますし
投稿: | 2016年8月29日 (月) 17時49分
4年半使っているVAIO Lシリーズが、GPU温度が最大で73度ぐらいまで上がり、ファンの爆音がうるさくてしょうがなかったので、初めて分解してファンの掃除とCPUグリスの塗り替えをしました。
ファンは思ったよりほこりはついていなかったのですが、CPUグリスはかさかさに乾いていたので、こちらを参考に、CPU,GPUに指で薄くぬりました。
結果、GPU温度が48度ぐらいに!なんと25度も下がりました!
ファンもうならなくなり、とても快適です。
(ウチのPCは、なぜか、CPU温度は表示されないのです。GPU温度のみ表示されます)
4年以上使っている古いパソコンで、CPU温度が高いと思われる場合は、CPUグリスを塗りなおしてみるのは手ですね。
最初から着いていたかさかさになっていたグリスはかなり厚めに塗ってありました。理論的には薄ければ薄いほど効果的ですし、そうするには指で塗るのは正しいと思いました。
とても参考になりました!ありがとうございました!
投稿: シンヤ | 2017年1月 5日 (木) 23時29分
シンヤさん、コメントありがとうございます。
少々留守にしておりましたのでレスポンスが後れてすいません。
私の記事がいくらかお役に立ったようで嬉しいです。グリスの塗り方なんて山のように紹介されていますのが、経験的に判断して紹介した方法は悪くはないのではと思っています。
基本シリコンは最低でも200度以上の耐熱性があるのでCPU程度の発熱では変質することは無いと考えてよいと思います。今CPUの放熱が悪いならば最初から悪かったと考えるべきでしょう。CPUグリスの塗り直しはパソコンいじりにおいて費用対効果の高い手段だと思います。
インターネットの時代となって情報はいくらでも手に入るようになりました。でもネット情報が正しいということはだれも保障してくれません。ご自身で体験し実証すること、これが大事だと思います。私も沢山の試行錯誤をしてきました。ネット情報は、ご自身の結論を出す上でちょっとばかり近道をする手段として利用されるといいかもですね。
新しい優位差を見つけられましたらどうぞ私にも教えて下さいね。
投稿: Fiby | 2017年1月 7日 (土) 12時25分
はじめまして、この記事を参考にさせていただきまして
ファンを交換させていただいたところイオンが改善されました!
しかし、右側についているusb2.0の端子が機能しなくなってしまいました。
近々ケーブル類などをつなぎ直してみようと思いますが
ドライバーの入れ直しなど必要なことがありましたら
ご教示していただけると幸いです
投稿: | 2017年12月17日 (日) 15時40分
こんにちは、コメントありがとうございます。
> ファンを交換させていただいたところイオンが改善されました!
ヒートシンクのファンを交換して異音が出なくなって環境が改善したということでしょうか。いずれにせよ良い方向に向かったようでなによりです。
> しかし、右側についているusb2.0の端子が機能しなくなってしまいました。
ヒートシンクファンの至近にあるUSBのマザーボードに刺さるコネクタの接触が悪くなってしまったのですかね。以前に問題なくUSBが利用できていたならば、ファン交換に伴う物理的な接触不良をまず疑うべきでしょうね。
この場合USBドライバーの入れ直しなどの手段は不要でしょう。WindowsもXP service pack 1a以降はUSB2.0に公式対応しておりドライバーの追加等の作業は求められません。
まずはハードウェア的な不具合を確認すべきかと思われます。
投稿: Fiby | 2017年12月17日 (日) 18時23分