あこがれの剱岳 その1
わたしの中にあって剱岳はちょっと特別な存在でした。北アルプスの奥に位置し、アクセスするのが大変であるのはもちろんのこと、劒岳 点の記 によると日本で最後に残った地図未測量の地点であったという。これだけでもわたしのような単細胞はぞくぞくしてしまう。
ある日気が付きました。諸先輩がたどったルートを検討すると、一泊で踏み出しへ戻ってこられそうなものもある。いっちょうがんばってみるかと身の程もわきまえずに考えたのでありました。この後えらいことになるとも知らずに・・・
今年5月に右鎖骨を完全骨折 して、現在は手術で金具を入れて補強してあるサイボーグ状態。腕は骨を金具で押さえているので普通に動くが、ザックのショルダーベルトが当たるとやっぱり痛い。でももう4ヶ月近いのでだいぶくっついてはいるだろうとテント泊装備の15Kgを担いで出掛けたのであります。
私は長野県側からのアクセス となるが、自家用車をトロリーバスの発駅扇沢に置いてから、踏み出しとなる室堂までトロリーバス→ケーブルカー→ロープウェイ→またトロリーバスと乗り継がなくてはならない。運賃は掛かるが映画で描かれた明治時代にはこんな便利なモノは全く無かったわけで、剱岳までどうやって行ったのだろうかとまさに想像を絶しますな。今に生まれて良かった・・・
途中の黒部ダムでは観光放水とやらで豪快に放水しておりました。ケーブルカーに乗って黒部平まで行くと今日登る立山の山並みが見えていました。ロープウェーの駅が岩肌から飛び出している。よくぞあんなところに作ったものです。あそこからまたトロリーバスが立山の地下を室堂まで伸びているんですな。踏み出しの室堂着、狙い通りいい天気。まずは正面に見えているお山をめぐって行きます。
よく立山といいますが立山っていうお山はないんですな。八ヶ岳みたいにいくつかのお山(雄山、大汝山、富士の折立)の総称らしい。そこを端より攻めて行きます。雄山の上には立派なほこらがあります。ここですでに3000mを越えていますね。途中黒部ダムが見えました。9年前 に黒部ダムから見上げた立山に感動したものだけど今度は反対側から見下ろしているなんてこれも感慨深い。見晴らしの良い尾根歩きが続きます。15Kgが骨折した肩に響くけどそれを忘れさせてくれるほどの雄大な北アルプスの情景に痺れますねぇ。
北アルプスのこの近辺ではまともな道しるべはほとんどなく、小屋の皆さんが手作りで作ったようなモノばかりだった。この辺は長野県側とは若干異なるところ。北アくんだりまで来るんだからルートファインディングくらいしっかり学んでいるんだろうなってな無言の威圧がある。わたしなんぞはGPSが無かったけっこう苦労しそうです。
せっせと歩いて剱沢のテント場に到着。そこそこ空いているので剱が見える平坦地を見つけてひと夜の寝床を確保。今回デビュー戦となるダンロップVS20はなかなかいい。設営撤収は楽ちんでしかも軽い。こいつとは長くつきあえそうです。
テントの中から剱岳を眺めながらの棒ラーメンは最高。いつもテン泊初回は棒ラーメンと決めています。今回はレア種のとんこつ味を見つけたので早速お味見。シナチクと味卵をトッピングして豪華な夕食です。
夕日の差したほんの一瞬でしたがそれまで雲に隠れていた剱岳が姿を表しました。すばらしい情景です。こんな一瞬に苦労をして登って来て良かったなぁと感じますねぃ。
さぁ翌日はあの頂に立ちますよぉ。その後に苦難の道のりがあるとはつゆ知らず、期待に胸膨らませる単細胞でありました・・・
つづく
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