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2018年9月 1日 (土)

鹿島槍で命拾い

Oogisawa
ほんとに死ぬかと思いました
  

山は懐深く、そして容赦はありません

お盆休みも無く働いて、毎年8月末から9月に掛けてのこの時期は数日休暇をいただいて北アルプスへ山登りってのがここ数年のパターンとなっておりました。さて今年はどこへ行こうかなと地図を眺めて、テント泊1泊でいける長野県は北アルプス鹿島槍ヶ岳標高2889mに狙いを付けた。本家槍ヶ岳は2年前に登っているので、もう一方の槍も忘れちゃいかんというわけですな。

テント泊でしか活躍しない60リッターザックを担いて8月30日早朝の扇沢を踏み出します。なぜか今回調子が良くて15Kgほどの背中が軽い。久々のテント泊に気持ちが高ぶります。この後にたいへんな試練が待ち受けているとも知らずに・・・

Yoake
夜が明けます。山の夜明けっていつ見ても荘厳です。雲はあるけど何とか天気よもってくれよと祈ります。

Eki

関西電力関電トロリーバス長野県側発駅の扇沢駅が見えます。あそこからトロリーバスに乗って後立山連峰をトンネルで突っ切り黒部ダムへ行ったことのある方も多いことでしょう。このトロリーバスも来年4月で廃止 され急速充電式電気バスにとって代わります。今は黒部のトロリーバスに乗れる最後のチャンスなんですよぉ。

Taneike
扇沢踏み出し標高1325mから2455mの種池山荘まで標高差1100mをただひたすら登ります。種池山荘へ抜けるとここからは尾根筋の見晴らしの良いルートとなるはずがなんだか雲行きが怪しい。迷わず先を急ぎます。

Jijigatake
行く先に爺ヶ岳が見えています。この山はピークを3つ持っていてジジイの3連発。俺はおっさんだがまだジジイではないぞとつぶやきながら巻道を選び爺ヶ岳はパス。ともかく天候が悪化する前にテントだけは張りたいですからね。

Tenba1_2

ズームアップすると尾根筋から本日のお宿であるテント場が見えている。うわさには聞いていたが確かに山小屋からかなり離れている。標高差もありトイレを借りに行くのも大変そう。1泊2食1万円を用意すれば布団の寝床と暖かいメシが用意されるのですがね。いいんです山登りを不便で語ってはいけません。

尾根の風下側に雲が立っている。この状況は尾根上にあるテント場に猛烈な風が吹いていることを意味する。設営も苦労しそうだ。
冷池山荘でテント泊の申し込みする前に土砂降りの雨となってきた。小降りになるのを待とうと思ってもこれがなかなかそんな気配がない。意を決して暴風雨の中で設営と相成った。風速は10m/s~15m/sは軽くあったと思う。

強風下でテントを立てるにはちょっとしたコツがあるのだがここは経験則がモノを言う。先にフライシートの風上2点のガイロープをタイダウンしてからインナーテントを組まず四隅をフレームに通す。このインナーテントにフライを四隅止めすれば少なくともテントが設営途中で吹っ飛んでいってしまう心配はなくなる。最後にフライシートの内側からインナーテントをフレームに吊り下げ固定する。つまりインナーテントとフライシートの組み立て順を逆にするわけだ。

ところが風速10m/s以上の暴風雨の中でこれをやるのもけっこう大変。普段は10分間で楽勝で組めるテントが40分以上掛かってしまった。でもしっかりタイダウンが出来ているテント内は荒天時でも快適な居住空間になるのです。

Tenba2
上の画像はちょっと雨が小降りになった時に撮ったもの。だだっ広い野営地に先客の黄色テント氏と私の2組だけ。結局翌朝までこの状態だった。他の人達は荒天のためテン泊をあきらめて小屋泊りにシフトしたのだろう。

テントをさっさと張ったら鹿島槍に登っちまおうなどと考えていたがとんでもない。設営でエネルギーを使ってしまったのでテントの中でごろごろして過ごす。横殴りの雨がいい音色を常に響かせてくれている。目いっぱい大きそうな石にガイロープをくくりつけてあるのでテントが吹っ飛ぶこともないだろう。このあたりまではまだ余裕があったりします。

Banmeshi
することも無いのでテント内で早メシとする。いつもテン泊初日はまるたい棒ラーメンと決めている。燻製うずら卵とサンマのおかずでエネルギー補給。さてたらふく食ったら明日の鹿島槍登頂に備えて早寝します、っていうか寝るしかない・・・

Kaminari4

夜中になると大気の状態が不安定になってきたのか暴風雨に加えて雷が酷くなってきた。特に真夜中12時を中心とした2時間の間、雷が連続して襲ってきて10分に一発くらいの割合で近所に落ちる。薄いテントの皮1枚隔てた外はまさに地獄の様相であったと思う。テントの中から見ると蛍光灯が点灯する際にちかちかするのが轟音の雷鳴と共に2時間ぶっ通しでちかちかやっているって感じ。自分のテントには落ちてくれるなと祈るしかありませんでした。

ちなみに翌朝撤収時に聞いたところによると、ご近所さんの黄色テント氏はこのピーク時に身の危険を感じて離れたところにある山小屋の外トイレに逃げ込んだのだそうです。あの天候下で10分以上も歩いて小屋まで歩く勇気は私にはありませんでした。なんだかカミサンと子供らの顔が浮かびましたよ。

朝までの荒天で結局満足に寝られませんでした。午前4時でも雷は収まったが暴風雨は相変わらず。まずは朝飯食ってから考えます。

Asameshi
これも最近の朝定番であるアルファー化した雑炊。朝にはこれくらいがいい。眠くて疲れた体でもすいすいと入っていくのが雑すいすい・・・(オヤジギャグ)

眠いし、外は暴風雨のままだし、天候は良くなる兆しも無いし、ここから見る鹿島槍は厚いガスの中だし、山頂まであと少しなのですが下山することにしました。人間命あってのものだねです。生きていればまた来ることもできますしね。

足取りが重い。鹿島槍登頂という目的を達せられなかったこともあるが、撤収時に雨をたっぷり含んだテント他をザックに詰め込んだので、食い物や飲料水の分が減ったのに来た時より背中が重くなった感じがする。でも山の神様はそんな私におまけを用意しておいてくれたのですよ。

Sunderb1
雷鳥が登山道に2羽出てきました。今までの北アルプス行でもお目に掛かるチャンスが少なかったですが荒天の中現れてくれましたよ。天気が悪くても腹は減るのでハイマツの実を食べに来たようです。

Sunderb2
雄の雷鳥は足環をしています。ヒナの時に識別のために付けられたのでしょうね。目の上の赤い肉冠がなかなかおしゃれです。

Sunderb3

Sunderb4
帰路爺ヶ岳のピークへ登る元気も無く、稜線を下山していると新手の雷鳥にも会いました。もう土砂降りの雨の中で非防水のデジカメをがしがし使っていたところ、このショットを撮ったら動かなくなってしまいましたよ。大きな雨粒の写り込みはご愛嬌。

Sunderb5
全てのグッズがびしょ濡れなので下山後寄り道もせずに家路に。途中山梨県北杜市のお気に入りポイントで日没直後の富士山がきれいに見えていました。スマホでパチリ。富士山はいつも変わらぬ姿を私たちに分けてくれます。死にそうになったうえに登頂まで断念してがっくりでしたが、この富士山で少し癒されました。

Fijisan
ある意味極限状態といういい経験をしました。山道具の中で命に直接係るグッズは必要なコストを惜しんではいけないとつくづく感じます。山用テント然り、ゴアテックスの雨合羽然り。特にあの暴風雨の中で、私の命を雨漏りもせずフォローしてくれたダンロップのテントに感謝したい。

Gps_log
帰った翌日は濡れたグッズの乾燥や手入れで1日つぶれた。まぁそれもまた楽しです。リベンジは・・・当分先かな。

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コメント

9月になりましたね。もう秋雨前線が活発化、早いものです。
夏休が纏まって取れないのはチト残念ですねえ。

さて、今回山行。「命やばいわ!」レポとしては第2弾かな?
能天気な私は雷なんて落ちてこない、とグースカしてたかもしれません。
怖い経験してないので、雷来るとワクワクするタチで...
でもこの記事読んで、危険を感じました。車中泊ならいざ知らず、テントですからね。
フレームがカーボンだったらこの記事は無かったのかな。
しかし好きだなあこういう体験。地球に生きてるって感じで。
だからアウトドアってやめられない。
これで翌朝がドピーカン。目の前に広がる絶景!だとよかったのにねえ。

ちなみにテント内の写真。どこのクラブかと思うほど妖艶なライティング状態ですね。

雷鳥達は案外逃げないものなんですね。ズームで綺麗に取れてる。
これが冬は白くなっちゃうとはねえ。生きる術ですね。

最近めっきりフットワークが悪くて。マイキャンプ場はどうなっているやら...
Fibyさんの記事で行った気になれてます。

ノブさん、
もう腰回りは万全で出張もつつがなく終了でしょうか?

> 9月になりましたね。もう秋雨前線が活発化、早いものです。
> 夏休が纏まって取れないのはチト残念ですねえ。

9月になったら早速新手の台風が日本列島を狙っていますね。
お盆休みが無いのはもう慣れましたが、代わりに休むこの時期の休暇はやっぱり成功裏に終わって欲しかったですが今回はダメでした。

> 能天気な私は雷なんて落ちてこない、とグースカしてたかもしれません。
> 怖い経験してないので、雷来るとワクワクするタチで...

しっかりしたお家で雷を眺めるなら私も安心していられたと思います。ただこのときはほんとにやばかった。私の短い山人生の中でもアドレナリン分泌が最高だった部類に入ります。

> でもこの記事読んで、危険を感じました。車中泊ならいざ知らず、テントですからね。> フレームがカーボンだったらこの記事は無かったのかな。

標高2500mの遮るもののない尾根上で、気流が尾根に当たって上昇気流が出来て、そこに雷雲が連続して発生したのでしょうかね。ともかくあの雷連発はノブさんにも経験してもらいたいくらいの迫力でした。確実にテント周囲に何発か落ちています。中にはバキバキなんて音もしていましたから低木に落ちたのもあったでしょう。
落雷するとテントの中が昼間のように明るくなります。

> しかし好きだなあこういう体験。地球に生きてるって感じで。
> だからアウトドアってやめられない。

生きてるっていう体験は貴重ですが私はいっかいでいいですわ (^_^;)

> これで翌朝がドピーカン。目の前に広がる絶景!だとよかったのにねえ。

ちょっとだけ私もそれを期待していたのですが、夜から朝まで変わらない暴風雨にこれまたがっくりでした。

> 雷鳥達は案外逃げないものなんですね。ズームで綺麗に取れてる。
> これが冬は白くなっちゃうとはねえ。生きる術ですね。

雷鳥はラッキーでした。荒天でだめかなとあきらめていたのですが、雷鳥も腹が減っていたのでしょう。ハイマツの実を一生懸命つついていました。これってほとんどズームアップしていないのですよ。ほんとに目の前1mくらいにいるんです。人間は害を及ぼさないということが良く分かっているのでしょうね。冬毛の白い雷鳥も見てみたいですね。

> 最近めっきりフットワークが悪くて。マイキャンプ場はどうなっているやら...
> Fibyさんの記事で行った気になれてます。

私の駄記事でそんな気になってはいけません。やっぱりノブさんのアウトドアは王道をいってます。ノブさんブログでもプライベートキャンプ場の記事は最近は見ないのでどうしているのかなとも思っていました。
ちょうどいい季節じゃないっすか。ぜひレポート期待しています。

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