バリエーションルート
1都3県で残っていた緊急事態宣言もめでたく3月21日で解除の運びとなりそうです。日常へとまた一歩近づきますね。行動の制約を一気に緩めてまた元に戻ってもいけないので、自重が必要なのはもちろんではあります。
とはいえそろそろお山にも行っても後ろめたくない状況とはなってきたと言えるかも。一昨年に日本百名山ハーフに届き当座の目標に達して、さて次は何にターゲットを当てようかなと思っていたらこのコロナ禍。しばらくの冬眠生活からそろそろ復活をもくろみます。コロナ禍の緊縮財政下、コストもさして掛からずテレワークで溜まった脂肪を燃焼させるのにも良い手段かなと。
登山は登山道を通るのがまぁ普通ですよね。メジャーな登山道は行政が管理メインテナンスをしてくれて、安全には十分に配慮され登山者にとってはありがたい限り。ただ何度か登って少しばかりその登山道に慣れてくると、少しは違ったルートも通ってみたいと考えるのも心情です。
登山はレジャー化される前から修行者や狩猟者、林業関係者らによって長年にわたり行われてきたものであるがゆえに、そのお山の頂に至るまでは様々なルートが過去存在していたものと思う。その中でも登山道表記がある国土地理院25000分の1地形図に載っていない登山ルートを一般にバリエーションルートと呼んでいるようです。
言うならば無管理私的登山道。道しるべのような案内表示は無論無いので道迷をしないことに絶対の自信がなければならない。そもそも登山道でないのでルートを高巻きしようが下降しようが好き勝手に決められる。ただし安全に対しては自己責任で完結することが条件となります。
私のホームグラウンドである神奈川県の丹沢山系。慣れ親しんだ登山道からちょっと外れてバリエーションルートを組み合わせるのは、このコロナ禍では登山道の密を回避する上でもいいのかなともっともらしい理由を付けて山行を考えてみました。
登山道以外を歩くうえでもっとも大切なことは常に自位置を把握していることだと思う。道も無いようなところで今どこにいてどこ方向へ進むべきかが分かっていないと即座に道迷いへと陥る。これにはスマホとGPSアプリがとっても有効なツールとなります。あまりこれに頼りすぎると山勘が効かなくなるとは聞くけど安全には代えられない。さらに上のスクリーンショットのようにヤマレコの「みんなの足跡」をスマホの地形図にタイル表示できればどのくらいの人達がそこを通ったのかまで推測でき、少なくとも誰も行かないようなところへ足を踏み入れることはなくなる。便利なものですね。昔は重たいハンディGPSを持って歩いていたけど今はスマホ様々です。
リスクは当然正規登山道より高いので捨てロープと3トンカラビナ+ループスリング、ツェルトに非常食は忘れずに。カミさんに事前提出する登山届には想定するルートを記載して渡す。そんなバリエーションルート対策をしっかりと行って丹沢は鍋割山へ寄(やどりき)より単独で登ってみます。
踏み出しは正規登山道から始まります。中津川沿いに数Km歩いてコシバ沢出会いからガレた枯れ沢に入りますがここからバリエーションルート。この沢をどんどんと上がって行くと崖をよじ登って正規登山道に至ると聞き及んでいます。ただかなりの難所らしくこの先右岸側に高巻きするポイントもあるという。これは勘で見つけないといけない。
もしかしたらこれかな?みたいなところで沢から外れてみる。すると高度が徐々に取れてきて沢側を見ると急こう配になっていることがわかる。こりゃ高巻きせんと辛いわ。ほどなくして鍋割峠と呼ばれる雨山峠からの鍋割山正規登山道に突き当たり最初のバリエーションルートはめでたくクリアです。ルートファインディングがなかなか楽しかった。
鍋割山頂はいつもとかわらぬたたずまい。前回より富士山はきれいに見えていました。普通の山登りは山頂を極めて終わりですがその先のもう一本のバリエーションルートを探すのも今回の目的です。
山頂より後沢尾根登山道を下って後沢乗越の手前で旧寄キャンプ場へ抜ける尾根の取り付きを探します。まったく分岐らしくないのですがスマホのGPS画面を見ながら目算を立てて登山道から思い切って外れてみますと・・・
なんと尾根上に立派なつづら折れの道ができていました。その横にはモノレールの軌道もある。こんな立派な築造が登山道から分からないように登山道直下に作られていたのには驚きました。ここは山頂より標高差で200mほど下がった場所。山頂小屋への荷揚げもこのモノレールを借りればボランティアの手を求めなくてもさくっと出来てしまうのではと思ったりして。
林業関係者が使う山道にしては立派過ぎる整備がなされています。これで地図上に表記が無いってのも不思議ですが、この近辺は公益財団法人かながわトラストみどり財団が委託管理を行う「やどりき水源林」の外れに位置することからその辺の理由もありそうです。
ときにこの敷設されているモノレールの軌道ですが、ものすごい急角度の箇所もあります。耕運機みたいな小さなエンジンでこの勾配を登ってしまうのですからすごいものですね。
快適に尾根筋を下って中津川にぶつかれば2本目のバリエーションルートは終わり。なかなか発見の多い今回の山行でした。過去雪の富士山では勝手気ままに山頂までの雪面を歩いていましたし廃道となった書策新道のような登山道を好んで歩いたりもしました。決して安全確実とは言えませんが、バリエーションルートをからめることによって今まで何度となく通った山を新鮮に感じることができるというメリットを確認しました。今回の収穫です。
高いお山、メジャーなお山ばかりが山じゃないですよね。五感を研ぎ澄まし不明瞭なルートの先を読みながら進むのもまた楽し。元来山登りは多少のリスクと隣り合わせになっているものでもある。わざわざリスクをさらに積み上げるのはどうかとも思いますが、リスクマネージメントを行う技術も求められるのが山登り。懐の深いスポーツですね。
だからやめられないのです、はい。
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