C56 149との再会
蒸気機関車C56の149号機が山梨県はJR小海線清里駅の屋外に静態保存されているとの情報を得て見に行ってきました。まだ蒸気を上げて小海線を走っている当時にこの149号機とは出会っているためこの再会は感慨深い。ガキンチョの頃に撮影した写真が残っております。
この写真は臨時列車八ヶ岳高原号で小淵沢駅からこの149号機が牽引して終点の野辺山駅に着いたときのもの。旧野辺山駅舎がなんとも味のある風情だ。このとき私はこの列車に乗って野辺山までやってきた。その時の様子はけっこう印象深く記憶している。
この八ヶ岳高原号は新宿駅を午前零時過ぎに出る中央線の最終となる臨時夜行急行アルプスに3両が併結されたものだった。定期列車が終わった土曜の日付が変わった後の深夜に新宿駅を立ち明け方に小淵沢駅に到着。3両を切り離してC56が受け継ぎ小海線を野辺山駅まで運行されていた。この客車急行がなかなかの人気で遊びに出かける観光客だけでなく土曜の仕事あがりに一杯飲んで終電に乗り遅れてしまったサラリーマンも多く乗り込み夜行列車なのに立ち席の人も出るほどの満席状態だったのを記憶している。軸重の軽い小型の蒸気機関車であるC56にとって満席の客車3両はかなりの重荷だったようで小淵沢駅から自転車みたいな速度で野辺山高原への急勾配を登っていた。清里駅の先にある国鉄最高地点を越えてやっとこさ到着し一段落というのがこの写真。当時白黒写真が主だったがなぜかこのときはネガカラーで撮っていた。小遣いも乏しかった私にとっては珍しいことです。
その149号機が今でも居ると聞き及んで西岳の登山ついでに会いに行ってきました。比較的保存状態も良く屋根付きで展示されておりましたよ。
キャブの中も見ることができます。
焚口戸は無くスピードメーターは壊れたままですが各種バルブ類やブレーキハンドル、嘘っぽい圧力計などはしっかりしていて好印象。静態保存機としては十分な保存状態と言えるでしょう。当時の写真がもう一枚ある。同じ日に信濃川上駅の近くで撮影したものだと思う。
これもC56 149で野辺山で客車を切り離し単機回送で中込機関区へ水と石炭を補給しに戻るところです。絵的にはつまらないかもしれませんが背面の雪をかぶった八ヶ岳連峰と田んぼの水面に映る機関車のシルエットがなかなかだと思う写真。背面のお山は平たいのが横岳、その右側が硫黄岳、左側は赤岳です。当時はそのお山のてっぺんに登るなんて想像もできなかったと思う。
炭水車の白いなぐり書きのアジ文句は労使闘争の名残りです。当時の民営化前の国鉄は春闘や順法闘争などしょっちゅうストライキをやっていた。よく読めば「鉄労解体 動力車」と書いてあります。鉄労(日本鉄道労働組合連合会)はストをしない穏健な組合で鬼の動労と言われた国鉄動力車労働組合とは反目する間柄。ただ組合同士のけんかなんて鉄道利用者にとってはどうでも良い話でありストで迷惑を被るのは常にお客さんなんですよね。機関車に落書きのように書かれたアジ文句も子供心にもいやでした。
もう蒸気は吹いていませんがうん十年前に出会った機関車と再度対面できるのはやはり嬉しいもの。懐かしいだけでなく断片的だった遠い記憶がフラッシュバックして蘇ったりするのですよね。D51 401、D51 775などに続いてC56 149もその引き金となってくれました。この先の出会いにもまた期待したいものです。
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