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シャイローファミリークルーズのその3
デッキにある各種兵装の説明を受けて、この船の圧倒的な存在感に驚きながら艦内へと入っていく。最初に魚雷室に案内された。弾頭部に安全キャップを付された短魚雷Mk46がラックに載っていた。発射時はこれをクレーンで架台に乗せ三連装のランチャーにお尻から詰め込み、画像右側にあたる舷側のハッチを開いて発射する。最初ハッチの存在がわからず、どうやって撃つのか聞いてしまった。
面白いデモを見せてくれた。ダメコンと呼ばれるダメージコントロール(被害対応)の練習だ。艦内の一室に火災の被害が及んだとの想定で発煙装置と赤いランプでそれらしい雰囲気を作り、ファイヤーファイター(消防士)の水兵さんが放水ホースを持って駆けつける。ちなみに画像右側に立っている説明役はチーフペティオフィサー、日本でいうと最上級専任曹長とでも言うのかな。下士官の中でもっともえらい人になる。その影響力は絶大で、若い士官学校出の士官などは相手にならない・・・と小説や映画ではよく設定されているのだが実のところどうなのかな。
さてそれらのダメージ状況は別室のモニターで確認できる。左側の画像は消火用スプリンクラーの作動状況が一目でわかるモニターだ。これらの状況に応じて消火班が急行するのだそうだ。機関制御室も撮影を許された。4機のGE製LM2500ガスタービンエンジンで2軸プロペラを回す。右側の画像中に計器類が4セットづつあるのがお解りだろうか。可変ピッチプロペラのため、後進するにはプロペラシャフトの回転はそのままに羽根のピッチを変えて後進を掛ける機能があるとのことだった。当直の水兵さんは暇そうだが、同じ制御卓は艦橋にもあるらしくどちらでもエンジンを操作できるらしい。
艦橋の操舵室に上がってみる。艦長が操艦指揮を執っており、逐一航海士から報告のある速度・方位・相対距離などの現在状況を "Very well" 「よろしい」と言って返していた。近海用のレーダーが動いていた。びっしりと近辺の船舶が表示されているが、交通頻繁な東京湾の深部でこんな大きな軍艦を操るのもけっこう神経を使う作業であったことと思う。操舵室の外側、フライングブリッジにはM249ミニミ軽機関銃がセットされていた。今回はデモ航海なので各種装備をこれでもかというほど見せてくれるが、船舶臨検等の時にはこれを構えて不測の事態に備えるのだろう。
シャイローは東京湾アクアラインの至近までやってきた。通称「風の塔」と呼ばれる海底トンネルのための換気設備の島が大きく見える。ここでぐるりとUターンとなるようだ。遠くにはアクアラインのパーキングエリア「海ほたる」も見える。その後軍艦らしからぬのんびりまったりとした時間が流れ、ホームポートの横須賀に帰ってきた。タグボートに押され接岸の体制に入る。朝、出港時にどいてもらった駆逐艦ジョン・S・マケインに横付けするようだ。5時間ほどのクルーズも無事終了とあいなった。
やはりこれは軍艦だ。航空母艦などとは比較にはならないが、その存在感はまさに圧倒的に感じる。日本は専守防衛の国である。海上自衛隊は基本的に防衛兵器しか持てないのが原則だ。この船に装備される各種の攻撃兵器をかいま見て、その差異に驚愕した。時間が取れたらその差異の本質を少し考えてみたいと思っている。
シャイローファミリークルーズのその2
横須賀港を離れ、船は順調に進んで行くがその速度は思ったより速くない。
ただ主機関である四つのガスタービンエンジンはジェット機のようなタービン回転音をさせながら一万トンの巨体を波の先へ進ませる。周囲を見ていると、どうもキティホーククスーズの際の航路とは違うことに気が付いた。東京湾を出る浦賀水道を通るには人工島の第二海堡を左手に見なければならないのだが、今回は右手に見える。むむ、ということは今回は東京湾を出ずに湾内を廻る遊覧船になるということだ。事前にもらった情報も少なかったので行き先も知らなかったのだが、これはちょいとばかり残念なところ。しかし武器を満載した遊覧船とはまたすごいものだと思う。
今回はゲストの数も少ないので艦内見学ツアーが船上で組まれたのだが、これは面白そうと参加することにした。船に装備する各種の武器についてそれぞれ兵装担当の水兵さんが英語で解説してくれる。普段見慣れない大型火器はどれも興味深い。
最初に見せてくれたのがMk38Mod2 口径25ミリの機関砲だ。水兵さんが持っているのは装弾試験をするための実物大のダミー弾だが25ミリとはいえけっこう大きい。この機関砲はレーダーで官制され自動で照準するのだそうだ。
後部デッキにはMk41 VLS(垂直発射システム)のハッチが並んでいる。このミサイルハッチから有名な巡航ミサイルトマホークやら魚雷の付いたアスロックやらSM3型スタンダードミサイルやら、色々なものを発射できるのだという。スタンダードミサイルってなにがターゲットなの?との質問には「バリスティックミサイル」を打ち落とすのだと答えてくれた。バリスティックミサイルってなんだと思い、帰ってから辞書で引いてみると弾道ミサイルのことだった。知らなかったのだが、シャイローは数少ない弾道ミサイル迎撃機能を持つ船だったのだ。ミサイルはマウントしてあるのかとの質問にはノーコメントだった。
艦尾には大砲も装備されている。Mk45 5インチ単装砲だ。ミサイル時代に大砲とはクラッシックな感じだが、自動装填装置を備え毎分20発撃てると言っていた。固定式筒状の発射機はAGM-84ハープーンという対艦ミサイル。発射後はジェットエンジンを使い巡航ミサイルのように敵艦へ目指す。
最も艦尾よりにはM2型12.7ミリ重機関銃も設置されていた。足元には弾薬箱があってここにはサビサビの弾が入っていたがこれはダミーでなくて実弾。5発に1発、弾頭に赤いペンキが塗ってあるがこれはなんの意味か聞くと「トレーサー」だとのこと。曳光弾ですな。弾筋が分かるように光って飛んでいく弾を混ぜてあるようだ。
まぁ、色々な武器があるものですな。願わくばこれらの武器が実戦に使われることなく耐用年数が来て引退してくれるのが望ましい。
次に艦内に入って船の中枢部へ案内してもらおう。
以下その3へつづく。
2006年の九月、その年の運を全部使い切って空母キティホークへの乗艦クルーズを果たしたのだが、今回は今年の残りの運を再度使い切って米巡洋艦のクルーズに乗艦する機会を得た。米艦には乗組員家族やその友人を対象としたファミリークルーズというような機会はけっこうあるようで、ともかくコネクションを駆使して情報を収集していると、まれにこのような幸運を得ることができるんですな。
軍艦は戦争の手段であることは言うまでもない。私は日本の小市民であり平均的な平和意識は持っているつもりだ。今回は平時における戦闘艦艇なるものがいかなるものなのかを知る機会として見て行きたい。画像は全て撮影の可否を現場の水兵さんに確認して撮ってきたものなので問題はないと思う。まずいところへカメラを向けるとNOと制止されるので判断は容易だった。
さて今回乗せてもらうのは神奈川県横須賀市を母港とする米海軍の巡洋艦でCG67 シャイローという船だ。タイコンデロガ級のイージス巡洋艦。排水量は約一万トンでキティホークの8分の1程だがそこそこ大きい。大きすぎて画像のへさきが欠けてしまった。イージスシステムの中核SPY-1型レーダーを備える艦橋がやけに大きいのが特徴だ。チェックインしてヘリコプターが離発着するフライトデッキに登ってみる。艦尾側にもSPY-1の六角形レーダーが向いているが、このイージスシステムは合計4個のレーダーアレイで360度全周をカバーするらしい。
そろそろ出航の時間だ。ヘリコプターの格納庫では艦長のアラン・J・アブラムソン大佐のスピーチが始まった。この時だけ日本語の通訳が付いたが、この先は全て英語でのエスコートだった。まぁ主たるゲストは乗組員の家族だから当然と言えば当然なところ。横に停泊していたアーレイバーク級の駆逐艦DDG-56 ジョン・S・マケインが離れていく。これもイージスシステムを持つ船だが本艦とは艦橋構造がだいぶ異なるようだ。
さて移動式クレーン車が乗艦用の橋を取り外していよいよ出航だ。
以下その2へつづく
番外編。
キティホークのクルーズは後の主催者側発表で2200人ものゲストが乗り込んだとの情報を目にした。よくぞまぁこれだけの人間を積み込んだものだ。確かにゲストルームにあてがわれたハンガーべイは終戦時の引揚船のように人でごったがえしていたが、二千人以上も余分に飲み込んでいたとは思わなかった。
今回の参加費は5ドル。これで朝ご飯と昼ご飯が付いてくる。ただしなにかしらの事故が起こったときに米政府へその責任を訴追しないという念書にサインを求められた。甲板から海に落っこちても自己責任だよというわけだ。フライトデッキにギャラリーを並べてそのすぐ脇でタッチアンドゴーを見せるとはさすがアメリカはやることが派手だ。日本じゃ絶対そんな危なっかしい見物方法はとらないだろう。それ以前に自衛隊には航空母艦は存在しないが・・・
艦内で提供された朝ご飯と昼ご飯。左の画像がモーニング、右側のがランチだ。こんなのをカフェテリア形式で好きなだけ取って食べていいのだが、そうそう腹に入るものではない。横では外人さんたちがトレイにてんこ盛りにしてばくばく食べていた。彼らのお腹はスチールでできているらしい。味付けもアメリカ風で、ハンバーガーの パテはなんだか淡泊でパンズはぱさぱさ。まずくはないがそんなに美味しいってものでもない。ただ当日けっこう波風が高くて揺れるかなと思ったのだが、8万トンの大ぶねはぐらりとも揺れなかったのでたらふく食べても船酔いの心配だけはなくて助かった。
エアショーが終わって帰港するまでの間、ハンガーベイではアトラクションで水兵さん達がゲストのファミリーにサービスをしていた。真っ赤なプロテクターで全身を包んだ水兵さんを、棍棒でもって好きなだけ殴りつけていいよというイベントに子供達の列が出来ていた。反撃は御法度のようで水兵さんはやられるがまま。子供限定なのだが、大人がやったらけんかになりそうな雰囲気がある。もっともワシなどはとても恐ろしくてできないが・・・
水兵さん達は皆親切で分からないことは聞くと丁寧に教えてくれるし、艦内もほとんど自由に往来できるのが有り難かった。さすがにカメラは御法度だったがCDC(Combat Direction Center 戦闘指揮所)も見学を許された。艦内では兵器庫と並んで一番機密度の高い部屋だ。真っ暗な部屋にレーダースクリーンやモニターディスプレーが明滅してしていて、スクリーンにはLink16という敵味方識別コードで繋がった友軍艦艇がプロットされていた。戦時にはここから命令を発することになるのだろう。ブリッジには登れたのだが操舵室が見られなかったのが残念と言えば残念なところ。
今回、純粋に怖いもの見たさの欲求は充足された。願わくばこの怖いものが本来の怖さを発揮する機会がこの先も来ないことを切に願いたいと思う。
中編の3の続編。
嵐のようなタッチダウンとテイクオフの連続が終わり、フライトデッキもやや落ち着いた。だがこれで終わったのではなかった。今度は各種の飛行機がフライバイという低空で近くを通過するデモフライトが続く。随伴艦を含めて一斉に左へと急速回頭をした。後方には伊豆大島のシルエットが延びている。こんなに島の近くで演習をしていたのだとは気が付かなかった。
ブリッジ上でフライトデッキの直上を音速で通過するジェット機を見ていると、タッチアンドゴーよりもさらに迫力がある。E-2Cのローパス(低空飛行)は機体が大きいだけに迫るものがあった。映画「トップガン」でもトムクルーズがふざけてフライバイを要求し、通過時のソニックブーム(衝撃波)で管制塔のエアボス(航空管制指揮官)がコーヒーをこぼしてしまうシーンが出てくるのだがまったくそんな感じ。目前で音速を超える時のソニックブームはまさに落雷のように聞こえる。コーヒーカップを手に持ってなくて良かったなぁと思う (^^;)
一機のホーネットがアクロバット飛行を披露してくれた。急降下に背面飛行、宙返り、きりもみ飛行、どれも難易度の高い技で、以前に航空自衛隊浜松基地でみたブルーインパ ルスの曲技飛行よりずっと大胆に見える。いちばん驚いたのは機首を45度に持ち上げた常態で失速寸前までエンジンパワーを落とし、低速で水平方向へスライドしていくという技。まるで犬の散歩のよう。派手さはないがF/A-18の運動性能とパイロットの技能を見せ付ける見事なもの、あまりに見とれて写真も撮る暇がなかった。
米海軍のオフィシャルホームページにて今回の行事を紹介していたのでそこから画像を少し拝借してきた。さすがに従軍カメラマンの撮る写真はすばらしい。ほんとにこんな風に飛んでいたのですよ。や っぱ道具かなぁ・・・と自分の腕の無さを棚に上げて道具のせいにするのはいつものことだ。
デモフライトも無事終了。艦載機はそのまま全機神奈川県厚木市の海軍航空隊基地へと向かった。耳当てのイヤーマフを外すと普段の世界に戻った気がする。興奮の2時間だった。
まったく偶然に降って沸いた今回のキティホーククルーズだったが、こんなチャンスはもうそうそう無いだろう。この船も2008年には退役する。後を継ぐことになっている航空母艦は言わずと知れた原子力船。もう日本人は乗せてはくれないだろう。自分の悪運に感謝しつつ、ハンガーベイに戻った。
軍側が提供してくれた食事をハンガーベイでほおばりつつ興奮の余韻に浸る。ふと開口部から外を見ると房総半島が見えてきた。ホームポートの横須賀はもうすぐだ。
今回は航空母艦の持つ圧倒的な軍事的プレゼンスを感じることができた。それらはパイロットたちの卓越したテクニックとその何倍もの数の関連要員たちによって支えられている。この1隻が日本海やアラビア海に存在するだけで周辺国に与える威圧感は相当なものと推察できる。しかしながらこの五千人の乗組員と何十機もの航空機を持つこの船一隻を維持・更新していく莫大なコストは、小国の総軍事予算にも匹敵する。平和はタダででは手に入れられないということだろうか。平和な日本はいまのところその傘の下に存在している。平和のために払わなければならない日本の代償について、落ち着いたらじっくりと考えてみたいと思っている。
延々と続いた長文をご覧いただきありがとうございました。
中編の2の続編。
飛行甲板上では発艦準備が整った。緑色のジャケットを着たカタパルト要員が準備完了のサインを送る。いよいよホワイト大佐のテイクオフだ。合図員がGOのサインを送り、重量20トンの飛行機を一瞬にして時速300キロ以上に加速する。すごい迫力だ。映画で観るシーンとはまるで違う臨場感がある。カメラのシャッター速度を速めてもとても静止できない。あっという間に彼方へ飛んでいってしまった。
アメリカの象徴である白頭ワシを尾翼に描いたホワイト大佐の僚機もアフターバーナーの赤い炎を残して発艦していく。カタパルトから打ち出されると艦首側のカタパルトに乗っていたホーネットも同時に飛び出していった。ともかく手際よい。次から次という感じ。パイロットや甲板要員の熟練度は相当に高いとみた。
引き続いてEB-6Bがカタパルトにセットされる。本艦の左舷側を寄り添うように併走するのは横須賀を母港とするイージス巡洋艦CG63カウペンス。こちらの方にも鈴なりのギャラリーを載せているようだが、やはり迫力は空母に乗っていた方がより強烈だ。カタパルト要員が入念にチェックをしてこちらも無事に発艦していった。
さて発艦のトリを勤めるのはE-2Cホークアイ。こんな大きな飛行機が飛び立てるのかねと思うくらいの存在感がある。でもさすがに蒸気カタパルトは優秀で、ぐんぐん押し出していく。上空では先に飛んでいったホーネットが編隊を組んで旋回をしている。フライトデッキ上の飛行機はこれで全機発艦していった。さて次はなにを見せてくれるのかな。
デッキがきれいになったら直ぐにタッチアンドゴーが始まった。最初のホーネットが艦尾から降下してくる。船は最大戦速で風上に向かって邁進している。ごう音と共にタッチダウン、その後エンジンを吹かしてまた離艦する。こりゃすごい。進入経路がちょっとでもずれるとフライトデッキ上のギャラリーに突っ込んでしまう。パイロットの腕前にはほとほと敬服してしまった。
ホワイト大佐の乗機も降りてきた。飛行隊指揮官なんだから下手なところは見せられませんぞ。この時はタッチアンドゴーではなく着艦フックを引っ掛けて降り立ち、即座にタキシングしてカタパルト甲板へ移動、直ぐにまた打ち出されていった。この一連の流れはほんとにすみやかで、作業のフローにまったくよどみがない。もうさすがと言うほかない。
E-2Cも負けじとタッチアンドゴーのデモンストレーション。しかしちょっと右にロールしすぎているぞ。あぶねぇあぶねぇ。
唯一着艦ワイヤーの状態が撮れたのは上右の画像。二番目のワイヤーを引っ掛けて無事着艦。この機も直ぐにまた発進していった。ともかくこれでもかというくらい着艦、再発艦、タッチアンドゴーを繰り返す。おかげで質は悪いが色々な写真を撮ることができて嬉しい。とはいうものの被写体の速度があまりにも速すぎて写真上では止められない。う~む、良いカメラが欲しくなったぞ。
アナウンスがあって飛行甲板が開放された。もう発着艦はしないようだ。これで終わったと思ったらとんでもない。まだ次の部が控えていたのだ。
以下最終編に続く・・・
中編の1の続編。
東京湾を出てしばらく経った。恐らくは大島沖あたりの訓練区域まで進むことになるだろう。ブリッジのフライトデッキ寄りから見ているとまさに高見の見物。フライトデッキにいるよりよく見渡せる。後方を見ると幅広いウエーキ(引き波)を引いていた。直径7メートルもあるスクリュー4基が30ノット近い速力を絞り出している。8基 あるボイラーもフル操業ってところか。
フライトデッキでは甲板員が一列になって異物を探して歩いていた。今回はデッキ横にギャラリーが並んでいて、10メートル先をジェット機がタッチアンドゴーで通過することになる。万が一車輪がパンクでもして人混みに突っ込みでもしたらえらいことになるのはもちろんだ。
面白い場面に出くわした。蒸気カタパルトの試験だ。このカタパルト、ジェット機を引っ掛けてエンジン推力と合わせて時速300キロ以上まで加速するもの。加速が得られなければ飛行機はそのまま海へ直行してしまう。入念にテストが行われていた。そうこうしているうちに手前にある派手な機 体に乗るパイロットが現れた。機体色とコクピット横に書いてあるマーキングから第27戦闘攻撃飛行隊(VFA-27)ロイヤルメースの隊長さん、“マグワイ”ホワイト大佐だと思う。マグワイとはコールサイン名で、あの名画「トップガン」でトムクルーズ扮するパイロットのコールサインは“マーベリック”だったのをご記憶の方もいるだろう。しかしホワイト大佐は日本語で「まぐわい」ってのがどんな意味だかわかってるのかねぇと思う・・・
いよいよエンジンテストが始まった。すごい爆音だ。射撃競技で使うイヤーマフ(ヘッドフォンみたいなやつ)をあらかじめ持ってきておいて良かった。これがないと難聴になってしまう。もちろん甲板上の機付整備員たちは皆でっかいイヤーマフを付けている。甲板上に駐機していたヘリコプターが上空監視の任を帯びて離艦した。準備は着々と進む。
発艦準備なった二機の横を艦首のカタパルトに向かってF/A-18Cがタキシングしていった。さらに複座のF/A-18Fも発艦待ちをするためその後を追う。編隊長機に比べると塗装はシンプルだ。上中の画像を見ていただきたい。ギャラリーと飛行機との間は僅かしかない。タキシングしてとろとろ動いていくくらいならまだしも、タッチアンドゴーをこの距離ですることになると多分ものすごい迫力になるだろう。迫力というよりも怖い。ブリッジに陣取っていて良かったなぁと思う。例の編隊長機の後ろにも順番待ちのEA-6Bが待機する。5機のジェット機と1機の双発プロペラ機全てのエンジンが回って甲板上はものすごい爆音の嵐。いやがおうにも期待が膨らむ。
さぁ、いよいよショータイムだ。
以下中編の3に続く・・・
前編からの続篇。
階層構造になっている艦内はまさに迷路と言うにふさわしい。しかも立ち入り禁止区域が設定されているわけでもなく、道案内が立っているわけでもなくてどこにでも行けそうな感じだ。この辺は乗組員が家族を彼らの持ち場へ連れていくのに制限を設けていないためだろう。何層にもなっている階層をひたすら上に登っていく。そのうち甲板へ出るだろうと思っていたら迷子になってしまい、"AIR BOSS"(航空管制指揮官)って書いてある個室の前に出てしまって一瞬あせってしまった。どうもブリッジ(艦橋)まで登ってしまった感じ。近くにいた水兵さんにフライトデッキへ行きたいんだと言ったらご丁寧にも案内してくれた。変なところにでも行かれたら困ると思ったのかな。
ブリッジのハッチから出るとフライトデッキはごらんのとおり歩行者天国状態。レーダーはぐるぐる回ってまさに航海中の雰囲気だ。足下を見ると着艦ワイヤーが何条も伸びていて足を引っかけそう。このワイヤー、直径4cm程あって飛行機の着艦時にはこれにフックを引っ掛けて止まる。まさにパイロットにとっては命綱となるものだ。
甲板上にはこれからデモフライトを披露する航空機が数機繋留されている。一番大きいのは双発プロペラ機の上空早期警戒機E-2Cホークアイ。大きなレーダーアレーのお皿が飛行中はぐるぐると回る。上真ん中の画像、艦尾に2機並んでいるのは一見似ているが実は左側がF/A-18Cホーネット、右側が新型F/A-18Fスーパーホーネットだ。さて画像から違いがわかるかな?上右の画像は電子戦支援機のEA-6Bブラウラー。ベトナム戦争当時からある攻撃機の改造版で、レーダーや通信の欺瞞を担当する影武者みたいな存在になる。
発艦用カタパルトにはすでに二機が用意されていた。上左はF/A-18C、真ん中の画像はF/A-18E。ホーネットと言えども色々と種類があるものだ。こちらの飛行機は派手なカラーリングをしている。編隊長の乗機だろうか。
そうこう物珍しく見ていると艦は東京湾の出口に向かっている。東京湾上にある人工島「第二海堡」のすぐ脇を通過した。外海はもうすぐだ。
ブリッジへ登っても怒られなさそうだったので行ってみた。フライトデッ キの見えるブリッジの外側へ出てみるとなかなかの見晴らし。ここでしばらく観察としゃれ込んだ。東京湾口も近くなった頃、上空警戒を行っていたヘリコプター(SH-60B)が降りてきた。カタパルト上に降りてしまったので飛行機の発艦区域である洋上に着くまでは一休みなのだろう。
今回のメインイベント、艦載機によるデモフライトももうすぐだ。しかし雲が厚くてデジカメ写真への光量が足りない。でも雨が降ってこないだけまだましか。
以下中編の2に続く・・・
なんと今年の末までに使う予定だった運をまとめて使ってしまったようだ。それほどの幸運に感謝する機会があった。
日本、アメリカに係わらず各国の軍隊には兵士の士気を高め、家族の理解を深めるために軍人・軍属とその家族を対象にした見学会を不定期に開くようだ。横須賀市になじみの深い米海軍ももちろん例外ではない。しかし、一般開放と違って、実際に米海軍の艦艇に乗船してクルーズする機会など日本人には望むべくもない。
しかし・・・しかぁし、基地関係者から前もって予定していたゲストが来られなくなったので空母キティーホークの日帰りクルーズ乗船に代わりにどうだという誘いを直前にいただいた。艦載機のフライトデモもあって費用は5ドルだという。もう後先考えずに二つ返事でOKした。
最初に申し上げておくが、駐留軍としての米軍に係わる様々な社会的問題があるのは十分承知をしている。軍隊・兵器は戦争のための道具であるのは言うまでもない。そんなものに飛びつくのもナンセンスという見方もあるかもしれない。しかし、今回は単純に「初めての経験」「怖いもの見たさ」を求めた結果とご容赦いただきたい。この機を逃したら二度とこんなチャンスは巡ってはこないだろう。それほど自分にとってはインパクトのあるお誘いだったといえる。
当日は雨マークの付く天気予報だったが幸い降り出しはは遅くなりそうだ。基地ゲートをくぐり徒歩にて空母用桟橋へ向かう。前方の交差点前方に大きな艦影がのぞくがさすがに大きく見える。近づくと青い看板が目に付く。米海軍の航空母艦の中で、唯一の前方展開(母港を米国外に持つ)空母で有る旨が読める。その看板の裏側にはたたずむ基準排水量8万トンを超える大型艦艇。圧倒的な存在感がある。さっそく桟橋から乗り込みチェックインさせてもらった。
出航前、まずはハンガーベイと呼ばれる格納庫の中から見学を開始した。公開対象が一般人ではなく基本的に米海軍・軍人軍属とそのファミリーなので、展示物もけっこうラフに展示してある。ここには航空機に搭載する様々なペイロードと警備等に使う小火器が展示してあった。上左の写真はSLAMというスタンドオフミサイル(AGM-84H)だ。航空機から発射されると巡航ミサイルのように羽を広げて目標まで飛んでいくもの。射程は280Kmもあるという。中間の写真はレーザー誘導爆弾の一種(GBU-24)。現在の主力攻撃機のF/A-18はこれらの兵装を主翼下にごってり積んでいくのだ。小火器類もライフル、ハンドガン、軽機関銃といろいろある。私でも撃てそうなレミントンのショットガンもあった。ただ銃口から察する口径は日本の標準である12番ゲージではなくもっと大型の10番ゲージのようだ。反動も大きそう。
ハンガーベイの大きな開口部から外を見ると、同じ第七艦隊所属ミサイルフリーゲート艦FFG51ゲアリーがタグボートに随伴されて一足先に出港していった。反対側の桟橋側を見ると移動式クレーンが橋を持ち上げいよいよ出港だ。8万トンの巨体が動き始める。隣の桟橋にはもう一隻航空母艦のような船が第七艦隊の旗艦LCC19ブルーリッジと並んでいた。これは佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦LHD2エセックスで厳密な意味での空母ではない。この船のお腹にはホバークラフトを二台積んでいるという。海上から基地側を見渡すと色々なものが目に入る。新しい岸壁には大きなクレーンが二台装備されているのが目に付く。ここは2008年にキティホークに代わって配備される予定の原子力航空母艦が使うことになるのだろう。
雲が厚いがまだ雨は降ってこない。さて、息苦しいハンガーベイからフライトデッキ(飛行甲板)へ出てみることにしよう。
以下中編の1に続く・・・
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